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特殊印刷とは何か?
特殊印刷とは、通常のオフセット印刷やインクジェット印刷では表現しきれない、独自の質感や加工を施す印刷技術の総称です。金や銀、ホログラムのような輝きのある表現や、触るとザラザラ・ツルツルといった感触が楽しめる立体的な印刷など、印刷の可能性をグンと広げてくれます。昔からあるけど、進化し続けているこの分野。職人として関わる中で、「これはもはや印刷というより“演出”だな」と思うこともしばしばあります。
シルクスクリーン印刷の魅力
私が長年関わっているシルクスクリーン印刷も、特殊印刷の代表格のひとつです。インクを版の上からヘラで押し出すことで、紙だけでなく布・金属・アクリルなど、さまざまな素材に印刷できます。インクの乗りが厚く、手触りも楽しめるのが特長。Tシャツや看板だけでなく、最近はアート作品やパッケージにも重宝されています。「量産品にはない味」を求める人にこそ届けたい技術です。
糊印刷(スクリーン系)
スクリーン印刷の技術を応用して、糊(のり)や粘着剤を印刷することもできます。たとえばホットメルト糊を印刷して、あとで熱転写したり、箔押し加工の下地に使ったりと、応用範囲は広いです。見た目には分かりづらい工程だけど、仕上がりに大きく関わる“縁の下の力持ち”的存在。現場では「見えないけど、いい仕事してるな」と感じる瞬間です。
マット印刷
マット印刷は、光沢を抑えた落ち着いた風合いを出すための技法。マットニスやマットPP(フィルム)などの方法があります。ギラつきを抑えて、上品で高級感のある仕上がりになるので、化粧品やアパレル系のパッケージに多用されます。個人的には、シルク印刷のマットインクが一番好きですね。質感が“しっとり”してて、つい手に取ってしまいます。
ニス加工・盛り印刷で立体感をプラス
印刷物に手触りの変化や視覚的な立体感を加えたいときは、ニス加工や盛り印刷が活躍します。透明なインクを部分的に厚く乗せることで、光沢を出したり、ぷっくりとした質感を作り出せるんです。たとえば、ロゴの部分だけツヤツヤにして他はマットに、なんていうのも簡単にできます。印刷物の中に“アクセント”を入れたいときにおすすめです。
パッド印刷
パッド印刷は、凹版にインクを乗せ、シリコン製の柔らかいパッドで転写する印刷方法。ゴルフボールやペン、工具など、曲面や凹凸のある小物にロゴや文字を印刷するのに使われます。見た目よりもずっと繊細な技術で、インクの粘度や押し付ける力のバランスが肝。何気なく見ている販促グッズにも、実はこの技術が活きてるんですよ。
エッチング(腐食印刷)
エッチングは金属板の表面を薬品で腐食させて凹凸を作る技術で、主にネームプレートや高級感のある表札、メタル名刺などに使われます。薬品を使う分、慎重な管理が必要ですが、その分仕上がりは芸術的。印刷というより“彫刻に近い”印象で、見る人の印象にも強く残ります。職人としては「モノの重み」を伝えられる技法のひとつです。
アルマイト印刷(アルマイト処理)
アルマイト処理とは、アルミ素材の表面を酸化皮膜で覆う処理のこと。印刷と組み合わせることで、耐候性・耐摩耗性に優れた仕上がりになります。主に工業製品や名入れプレートなどで活躍しています。インクが素材にしっかり染み込む感じがあり、「刷った」というより「刻んだ」ような印象。長く使われる製品にはピッタリの加工ですね。
特殊加飾演出
箔押し印刷(ホットスタンプ)
高級感を演出するなら、箔押し印刷が効果的です。金箔や銀箔を熱と圧力で転写する技術で、名刺やパッケージに一気に格上感を与えてくれます。キラッと光るロゴや文字を見ると、「おっ、これはちょっと違うな」と思わせられますよね。実際の現場では、箔の厚みや版の角度にもこだわることが多く、意外と繊細な作業です。
エンボス加工(浮き出し)
紙や革の表面を型で押して、柄や文字を浮き出させる技術がエンボス加工。高級感を出したいときに最適で、名刺・パッケージ・文具など幅広いシーンで活用されています。触って分かる“印刷の存在感”は、やはりアナログの醍醐味。私はエンボスを見るたび、「この紙、ただ者じゃないな」と感じます。
デボス加工(凹み加工)
エンボスの逆で、紙などの素材を凹ませて表現するのがデボス加工。こちらも高級感は抜群で、表現次第では落ち着いた印象やクラシカルな雰囲気が出せます。最近ではミニマルなデザインにもマッチしていて、シンプルだけど印象深い仕上がりになります。押し型の精度が仕上がりを左右するので、なかなか気を抜けない工程です。
UV印刷とその可能性
UV印刷は紫外線で瞬時にインクを硬化させる技術で、紙だけでなくアクリルや木材など、非吸収性の素材にも対応できます。乾燥時間がいらず、にじみが起きないため、細かい表現もくっきり再現可能。印刷の現場でもデジタル化が進む中、この技術の活用範囲はどんどん広がっています。「刷れるものなら何でも刷ってみよう」が実現できる、夢のような技術です。
UVインクジェット印刷(ロール紙タイプ)
UVインクジェット印刷の中でも、ロール紙タイプは長尺の素材や大量出力に向いています。屋外用のシールやラベル、ポスター、壁紙などにも活用され、耐候性や発色の良さが特徴です。印刷後すぐに乾くから、加工工程もスムーズ。現場では「スピード重視だけどクオリティも妥協できない」なんて案件に重宝される機械ですね。特に小ロットの多品種展開が求められる時代に、なくてはならない存在です。
UVインクジェット印刷(フラットベッドタイプ)
フラットベッドタイプのUV印刷機は、アクリル板・木材・金属板など、厚みのある“板モノ”に直接印刷できるのが最大の魅力。販促什器やノベルティ、店舗のディスプレイにもよく使われています。立体物の表面に直接刷れるので、「え、ここにも印刷できるの?」という驚きを与えてくれます。印刷屋としては、“何に刷るか”を考えるのが楽しくなる機械です。
レーザー加工(レーザー化工)
レーザー加工は、素材をレーザー光で切ったり彫ったりする加工技術。紙・木・アクリルなどに繊細なカットや彫刻を施せるので、オリジナル感を出したいアイテムに最適です。印刷と組み合わせることで、他にはない商品を作ることも可能。イベントグッズやアクリル雑貨でも人気のある手法です。最近は「レーザーカットできる?」という相談が増えてきました。